〜1998年の旅行のお話です。8回にも及ぶ長編。
旧コンテンツからまとめて引っ越ししたものなので、物好きな人は読んでね〜
第5話はこちら
3/28(土)
朝 6時過ぎに目が覚め、Kは朝風呂に入った。昨日から「一番風呂は俺のものだ」と言ってたから きっちり目を覚まして風呂に行ったのだろう。
私はもう一眠り心地よい眠りをむさぼるが、寝起きの悪い夢を見て7時前位に起きだし、風呂へ向かった。Mはよく覚えていないが、まだ眠っていたような気がする。
朝風呂もまた格別、そういえば脱衣所にあった注意書きに「温泉にキツネ、イタチ、昆虫などが入るので最後はカバーをしてください」というのがあった。
昨日は被ってなかったが入ると脇に畳んで置いてあった。後から聞いたらKが一番乗りで畳んで置いたそうだ。出る少し前にMが入って来て私はかなりゆっくり入ったが、やはり7時過ぎ。早起きは三文の得というやつか。
そういえば、今日の天気は曇り。しかし結構明るく、気温も心地よかった。
風呂を上がると、食事の準備が出来つつあるようで慌ただしく、台所から広間を行き来している。そしてすぐに準備が出来たようでMを呼びに行くのだが、いつまでも相変わらずマイペースで苛立たせた。でも一言「先食べてていいよ」との声に容赦なく先にKと朝食にしたのだった。メニューは日本旅館のスタンダードな朝食で 海苔、フリカケ、お新香、だし巻など。Mもそれほど遅れずにさっぱりとした顔をしてやって来て一緒に食べた。でも美味しいんだなこれが。沢山食べた。お茶も美味しかったし、それを水筒に詰めているおばさんもいた。出来るなら私もそうしたかった・・・
それからタクシーの予約の電話をした。11時20分頃の電車に乗るということで話したら「10時40分でどうでしょう」 というのでその通りにして後は優雅に待つだけだ。荷物の片付けや精算を終わらせた。一人12000円程の残りを払ってから。挨拶をして庭に出てタクシーを待つというと「あら時間がありますね」ということでコーヒーとお菓子をもってきてくれた。この時本当は玄関脇に囲炉裏端の部屋があってここに入ってみたかったのだが、先客がいて断念、外をうろうろして、写真も沢山撮った。-
タクシーがほぼ時間どおりやって来て(数台来たが私たちが最後で不安だった)、乗り込む。女将さんは深々と頭を下げ、見えなくなる位まで下げっぱなしの様だった。若女将・・・と思いつつ、タクシーにKと一緒に後部座席へ、Mは助手席に。今度の運転手さんはなかなか無口な人だった。しかしMが珍しく話しかけ、それにはちゃんと答えてくれて穏やかな会話が車内で続いていた。
この時、私の心は途中にある郵便局(寂しい財布)と外の穏やかな景色にあった。この運ちゃん、宿からメーターが入っていなくて、ぼったくりか?と思っていたら宿の上に行ってからメーターを入れ始めた。サービスだったんだね。ごめんなさい、運転手さん。
駅につき、荷物を下ろして、電車を待つ。切符を買い、そこには宿が一緒だった、女性の二人組みが居た。ちょっと気になっていたんだよね。
Kはトイレに行きたいらしく 外のトイレへ走っていった。
するとすぐに、電車が入って車掌さんが「乗って下さい」と降りて来た。Kはトイレから戻って来ないし、車掌さんは急かすしで 仕方なくKの荷物を持って電車に乗り、二人組と話を少ししたが続かないから止めた。半分乗り遅れることを楽しみに待っていたがKは来てしまった。 さて電車は走り始め、いざ恋路へ 今日は造り酒屋「宗玄」へ行くのだ。
恋路で下車すると今日は昨日とは違い天気がよい。あの鳥居で写真も撮りたい気分だ。宗玄は地図で見ると駅から近いようだが本当のところはどうなのだろうか? 実際 徒歩10分位で着いてしまった。
小奇麗な蔵造りっぽい建物でした。人気はほとんど無くやっているのかなと思っていたらKががらがらと引き戸を引いて声をかけました。すると中から女の人が出てきて見学したい旨を伝えると、昼休みの最中だったので少し困ってましたが、受け答えの方がいらっしゃるのが判ると 快く迎え入れてくれました。
見た目はちょっと怖そうな杜氏さんが奥から呼びかけてくれて、説明をしてくれました。
全ての樽を覗かせてくれて、1日毎の発酵の経過とか、仕込んだ酒米を食べさせてくれたり、今と昔の違い、機械の構造、ラベルの種類による張り方の違い
(和紙製のラベルは収縮があるので、機械貼りは出来ず、手貼りだそうです。ここの辺りの手間も高級酒の一要因なのですね。)など、温度管理のこと。
精米した米粉が今は売れないこと
(以前は煎餅などの素材として良い値段で買い取られ人件費がかなりまかなわれていたそうですが、今は輸入米などに押され、なかなか引き取り手がないそうです。 目先の安さ、手軽さに引かれるのは分かりますが、なにか釈然としないものを感じました。)
もちろん 搾りたての生原酒も(醍醐味ですよね)
でも試飲をさせてくれても、搾りたての原酒を子爵でくれる所は初めてでした。
そして、受付で地酒を買い求め、社長さんとも少しお話しすることもできました。
埼玉から来た、地酒が好き、興味が有ったから寄らせてもらった。と伝えるとよても嬉しそうな顔をしていらっしゃいました。
そしてランプの宿の日本酒はここのものだそうです。
そして なんと社長さんは「お土産上げなさい お土産上げなさい」としきりに言っていて、女の方が4合瓶の”原酒”をくれました!! それも一人づつにです。そして もう一つの本命ともいえる、酒粕。
意外なことに、小売りはしていませんでした(残念)。 しかし おお売りはしていました(笑)20kg 2500円 安いでしょ? 今までスーパーで買っていたのは何?って思っちゃいますよね。kg125円ですよ??
そんなの引きずって帰るわけにもいかないし、もし買っても持て余してしまうので諦め、小分けしてもらえないかお願いしました。すると 「じゃあ少しあげましょう」とまたまた意外な答えが、社長さんとお話をしていて数分後に酒粕を持った女性が戻ってこられました。スーパーの白い袋に一杯の酒粕が、4〜5kgはありました。何だか田舎の方って(良い意味で)欲が無くて、直感的な親切さがいいですよね。
結局もらったお酒と会わせて3本、それと酒粕をぶら下げて大きな鞄を担いで歩く3人組。私の鞄は最初とは打って変わり、拡張性が幸いしたか災いしたかは判らないが、大きさは他の2人と変わらなくなっていた。
<続く>