蒸し暑い季節が近づきつつあります。
これは実際に友人と過ごした夏のキャンプでの出来事です。
それは 確か・・・ 1994年8月。
高校時代の同級生と3人でキャンプへ行った。
仕事の休みが取れないこともあり、必然的に時期は盆近く 場所は秩父。
キャンプ場を予約するでもなく、キャンプサイトを探しながらのドライブで川沿いの道を登ってゆく。
ふと脇道を見つけ試しに降りると、ちょうど川に降りるための車を置くスペースらしきものもあった。
辺りを軽く散策しそこにキャンプを張ることに決めた。
車を置く為の場所らしいというのは、丁度車を止めるのに丁度いい程度の広さにワラが敷き詰めてあったから。
そしてその隅には女物の靴が片方泥のついた状態で置いてあった。
多分誰かが忘れていったのだろう・・・。
一応その靴は踏まないように車を止め、サイトを張り、川で遊んでバーベキュー。
そ し て 、 日 は 暮 れ た ・ ・ ・
辺りは明かり一つも無く、数十分程するとトラックが過ぎる音が聞こえる程度。
用を足すのも明かりが無ければ、否、テントからも出れないくらいの暗闇だった。
アウトドアでの眠りと目覚めは早い。
ジャンケンで位置決めをし、私は真ん中、他の2人は川側と林側。
眠りに就こうと3人がテントで頭を並べて横たわり、
川のせせらぎって結構大きい音だなあと無意識に聞いていた。
すると
「バシャバシャ」
しばらくその音は続き、次第に女の子(幼稚園児〜小学生低学年くらいなイメージが何故か分かる)
がはしゃいでいる声が確実に聞こえてきた・・・。
その上 その子の気配もはっきりと感じられる!
無論子供がこのような時間に川で遊び廻るはずは無いだろうし、
明かりもやはり辺りには感じられない・・・。
いくら地元の子供でもこんなところで遊ぶはずは・・・。
流れも、それなりに足を流されるほどの勢いはあるのだ。
ありえないと思うと耳を塞ぎはやく眠りに就いてしまいたくなった。
他の二人は起きているのだろうか?
だがもし寝ていたり、起きていても気づいていなければ
むやみに怖がらせても悪いので黙って朝まで待とうと思った。
その後、もう一つの気配が・・・。
水辺で遊ぶ子供を気遣う親の気配・・・。
声が聞こえるわけではないが気配がはっきり感じて取れる。
冷たく, そして永い時間が流れていった。
シュラフに潜りうずくまって時が経つのを待った。
そして朝、昨晩の事を3人が同時に切り出した・・・。
友人の一人は親の気配が父親であることまで分かったという・・・。
さらに、林側に眠って居た友人は 外で女性がか細く何かを探しながら呟いている声らしきものが聞こえたという。
翌日川沿いを散策していると、数十メートル下流に鎖でがんじがらめの吊り橋と異様な廃屋
(分校のようイメージの建物)を見つけたが関連性は全く分からない。
ただ昨晩とオーバーラップして余計に不気味に感じられた。
迷った揚げ句にそこにもう一泊したがその夜は何も起こらなかった。
寝場所を決めるジャンケンに自然に熱がこもったのは言うまでもないだろう・・・。
※この文章は『逢魔が時物語』に収録されたものです