〜1998年の旅行のお話です。8回にも及ぶ長編。
旧コンテンツからまとめて引っ越ししたものなので、物好きな人は読んでね〜
第3話はこちら
タクシーで快適に宿の玄関に到着。大体駅から30分位かかった。
玄関戸を引くと高い天井と、白い壁 黒い柱 太い梁のある古い日本風建物だ。
声を掛けると中から女の人が出て来た。
まず、玄関の左手がお勘定場で 右が風呂場との案内の後、今日は撮影のために5:30-7:00まで貸し切りと聞かされ、
撮影何かが来るんだと思うのと同時に、時間が削られることにちょっと腹立たしかった。
でも、テレビだろうか? 雑誌か何かだろうか?
その辺りは軽く聞いたがノーコメントだった。部屋へ早速案内されて行く。
勘定場の奥の階段を上がって一番手前の部屋だった。
入ると、なかなか小ざっぱりして広めの部屋(12畳)だった。
わたし達の部屋は一番安いほうの部屋で底値から2番目に安い部屋(Kも少しは見栄を張って1ランク奮発したそうだ)。
部屋にはテレビも無く、やはり白い壁、黒い柱、板張り天井。
ランプは電球の物だったが、そこの吊り具のところは煤けていたので以前は本物のランプだったのだろう。
何だと思ったが、全ての客に火の始末を任せたのではやってられないだろうし、
そんなことしたらもう何度も焼失しているのではないだろうか?
衣紋掛けの所に女将さんのコメントの入った書籍と、能登の風景写真集が置いてあり、
浴衣、タオル、座布団カバー、お茶菓子、お酒のラベルに至まで全てオリジナル。
これは金かけてます。サービスもいいし、すぐにLサイズの浴衣を持ってきてくれたり(背格好を見て)。
タクシーの運ちゃんによると 石川県はジャーナリストによる温泉宿連続ナンバー1だそうで、それも頷けるような気もする。
タオルは宿の人も「どうぞ」と言っていたのでせっかくだからお土産にした。
さて、撮影の始まる時間まで1時間弱あるので早速3人で風呂へ行った。
脱衣室が洞窟のようになっており、壁の横穴に服を入れる感じで面白かった。
風呂場は岩風呂でシャワーが4つ位のこじんまりした風呂だが、雰囲気はなかなか。
で、大きな 本当に大きな取っ手の無い(更に枠は岩の奥)サッシ戸を開けると露天風呂があった!!
一生懸命手を差し込み扉を開けると、外は寒い!! 当たり前(笑) 雨じゃなくてみぞれになっていたのだから・・・。
一度戻って体を洗い(実はKとMが気付いていたかは判りませんが、昨日の薬草湯かヨモギ湯の香りが下着から香っているような気がしていたのです。)
岩風呂に浸かって、いざ出陣!! みぞれに当たりながら、露天に走る。
すぐ左隣が女湯で洞窟風呂になっていて、こちら向きに窓が開いてあり上手くいけば観えそう。ウフフ
だが観えない(泣)。そこの天井にゆらゆらとお湯の揺らめきが映り込んでいてそそるというか、情緒があった。
露天の湯ですが、ガイドにあったとおりに少しぬるめ(だってみぞれがっ!)で肩から上が涼しい。
これが本当の頭寒足熱でしょう(笑)。
そこからの眺めは最高で、入江を一望、水平線を一望 湯はのぼせず温かく空気は涼しい。
「いいねえ」
なんて繰り返しながら浸かっていた。
他にどんな話をしただろう? 確か そんなような事しか言わずにずーっと入っていた。
今入ってカメラマンが来たらレポーターやってやろうとか言っていたが、大きいのは口だけ、撮影の時間にならないように上がる。
部屋へ向かう途中、食事をする広間の脇を通と、もう食事の準備で大あらわだ。
もう食べられるのではという感じだ(お腹もペコペコ!)。
部屋に戻って 荷物を方付けているとすぐに食事の準備ができ期待の食堂へ行った。
木製の引き戸を引いて広間に入ると二間繋がって二十数畳の部屋にお膳が並べられている。
その上にはすんごい!! 料理の数々が盛られた皿がびっしりと並べられていた。
まずお茶を飲み、頼んでいたはずの二合の燗酒を待つのだが、お茶が美味かった。
風呂上りでビールとか他の客が飲んでいると美味そうに見えるのだが、それが止らないくらいだった。
やがて燗酒とお櫃とお吸物が来て本当にお膳が溢れた。吸い物は湯葉で凄くコクがあり、とろみがあってもう絶品。
あと、あと、あと 書ききれないくらい美味しかった。
美味しかったのはカツオのタタキだったな、他にも刺し身はいろいろあったがあれが絶品だった。
その上Kがたらふく食うのでお櫃に2杯もお替わりをして平らげた。
K曰く、「おかずが沢山あるから、ご飯も進む」のだそうだ。
それにしてもお替わり分はKが一人で食べたと言っても過言ではない。
私とMは一杯づつ位はお替わりしたが、「おかずがあり過ぎて食べれなかった。」
ご飯ももちろん美味しくてそれだけでも食べられそうなのだが、おかずももっと美味しかった。
それを作った水はもっと美味しいのだろうと言うことで、お冷も頼んでお替わりもした。
笑ってしまうのが Mは蟹や海老などの甲殻類を苦手としている事。
何と一人一杯の蟹が出ていたのだ!!
「なんで あんな虫みたいなのが好きなんだ、信じられない」
だって。刺し身は大丈夫なそうだ。
蟹もったいないからあげると言われていたが、とても人の分まで食えるほど余裕は無かったのだ。
奇麗に蟹一杯残してしまった。
部屋に持って帰れば良かったとも後悔している。
燗酒が残り気味だったので、蟹の甲羅に注いで味噌を解かして飲んだが、味は良く分からなかった。
そして何もかも美味しい食事は幸せに過ぎ去り、部屋に戻った。
<続く>