シズコさん

投稿日:2010年10月29日 更新日:


シズコさん

娘が母に付いて語る一冊。
エッセイというか、母と佐野洋子さんご自身の一緒を綴った一冊という感じです。
とは言っても70歳を過ぎています。
四歳位の時、手をつなごうと思って母さんの手に入れた瞬間、
チッと舌打ちして私の手をふりはらった。私はその時、二度と手をつなが
ないと決心した。その時から私と母さんのきつい関係が始まった。

母さんは
34歳で子供を3人失った。その時筆者9歳。「そして多分その時から母が変わっ
たと思う。当時は私は理由がわからなかった。母の私への虐待が始まったのだ。」
以来、子供の話を聞かない乱暴で険しい母さん。だが、家事能力は非常に優れ、
整理整頓もお金のやりくりも上手、他人には陽気で親切で頼りにもされていた。
42歳のとき夫が死んだが、4人の子を全部大学まで入れた。筆者は、年をとれ
ばとる程、かつて母にこづき回されたことを鮮明に思い出して苦しむ。だが、
本当に苦しいのは母を好きになれない自責の念である。それら重いテーマを綴
りながら、「憎しみの代償」として高額の老人ホームに「捨てた」母さんが、
次第に母さんじゃない人になっていくさまを淡々と、ときにユーモラスに記す。
読んでいてつらいところもある。だが、この話には救いがある。カタルシスが
ある。奇跡のような瞬間がある。母さんが呆け始めて、6年以上たっていたあ
る日。筆者はほとんど50年以上の年月、自分を苦しめていた自責の念から解放
される。自分でも予期していなかった、思ってもいない言葉が自然に出て来た。
「『ごめんね、母さん、ごめんね』号泣と云ってもよかった。『私悪い子だっ
たね、ごめんね』母さんは正気に戻ったのだろうか。『私の方こそごめんなさ
い。あんたが悪いんじゃないのよ』私の中で何か爆発した。」ここで泣かない
読者は人間ではない(いや、そこ以外でも)。すべての女性におすすめしたい
本である(いや、男にも)。

-

執筆者:


comment

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

関連記事

下駄で歩いた巴里

昭和初期に一人で気ままにシベリア鉄道に乗って巴里、ロンドンに行ったり 基本的に自由人? 文体も硬くなく、語り口調の日記という感じでしょうか? どことなくアンネの日記を読んでいる様な気分になります。 期 …

インシテミル

細かい設定はさておき、超高給アルバイト時給11万2千円に応募し決定した12人。 ルールブックの掟に従わない場合は殺されることもあり、各人には武器が用意してある。 実験のための地下の密閉施設で7日間を過 …

地下鉄は誰のものか

地下鉄は誰のものか 少し前に読みました。 猪瀬福都知事は、着実に仕事を進めている感じがしますね。 営団地下鉄と都営地下鉄の同じ駅なのに仕切り壁があったり、 そういう不合理をなくして統合していって欲しい …

祝山

祝山 (光文社文庫) 加門七海さんの著書はどうも、読んでしまうんですよね。 凄く怖いというわけではないのですが、 なんだか怖さが染みこんでくる感じでしょうか。 ジワジワッと来て怖い。 知人が肝試しに行 …

RIDE BACK

RIDEBACK オリジナルな2輪メカのデザインが斬新な、アニメーションです。 変形するバイクに腕が付いており、その腕でバランスを取ったり、物を持たせたりして 活用します。 腕時計タイプのセンサーを付 …